11月を迎えて:満身創痍
- hisanorifukunaga
- 11月1日
- 読了時間: 2分
11月になりました。ちょうど北海道では紅葉が見どころであり、連日、とても多くの観光客が大学内を観光しています。今年もあっという間に終わりが見えてきましたが、この秋は学会出張などもあり、私も体力的にきつい状況です。もはや満身創痍という感じでしょうか。
そんな厳しい状況ではありますが、こと研究成果については、ラボの規模・環境からすると、今年はよく頑張っている方なのではないかとすこし嬉しく思っています。最近、ミトコンドリアゲノムに対する放射線影響について、我々は興味深い現象を相次いで見つけているからです。
日本アイソトープ協会の広報誌『Isotope News』から依頼されて執筆した原稿が来月に出版される予定であり、その中に詳しく書きましたが、私が北大に赴任してからこれまでやってきた研究はつまり「放射線は世代を超えて影響するのか?」という大きな疑問に迫るものでした。そして、その謎をとく鍵の一つはミトコンドリアではないかと思っていました。
今年は胸を張って「ある程度の進展がみられた」といえそうです。
親が放射線に被ばくした場合、子どもにもその影響が観察されるだろうか?
その疑問に対し、ショウジョウバエを用いて人為的に突然変異体を作ってみせたのが、ハーマン・マラー博士であり、彼はその業績をもってノーベル生理学・医学賞を受賞しました。当時、放射線被ばくによる突然変異の研究は、マラーに限らず、世界中で展開されており、冷戦下における核実験とともに社会的に大きな関心事でした。例えばゴジラはまさにそのような時代の中でこそ生まれた映像作品だったと思われます。
しかし、今のところ、ヒトにはこのような放射線遺伝性影響はみられないと考えられています。その理由は判りませんが、とにかく明らかな放射線の遺伝性影響は見つかっていません。
私たちは、マウスを用いてミトコンドリアゲノムを介して放射線の遺伝性影響が存在することを実験的に示してきました。あくまでマウスではありますが、親が被ばくすると、子どもにも影響が出てしまうということです。それだけを聞くと絶望的な気持ちになるかもしれませんが、我々の研究は一味違います。適切に介入することで、この影響を予防あるいは治療できるのではないかと私は思っています。
やるべきことはまだ沢山残されていて、私も出来るだけ早く色々なことを検証したいのですが…。今のポストは、なかなか研究だけに集中できない環境のため、様々な疲れも溜まってはいます。せめて11月、12月に、もっと研究が進むように頑張ります。
(文責:福永)

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