12月を迎えて:ラストスパート
- hisanorifukunaga
- 11月30日
- 読了時間: 3分
2025年も11月が過ぎ去り、12月を迎えることになりました。
実は、先日、お世話になった恩人が亡くなられていたことを知りました。とても残念であり、なかなか気分は晴れませんでしたが、止まない雨はありませんし、明けない夜もありません。時間が解決してくれたというべきか、最近、すこし気分が上向きになってきました。
11月は正直者のジムことジェームズ・ワトソン博士も亡くなりました。
彼がフランシス・クリック博士と1953年4月『Nature』誌上に発表した「DNA二重らせん構造の発見」に関する短い論文は、アインシュタインによる一連の論文と並んで、おそらく20世紀中で人類全体に最も多大な影響を与えたのではないかと思われます。
あまり知られていないかもしれませんが、ワトソン博士が生物学の博士号を取得したインディアナ大学には、当時、放射線の遺伝性影響に関する研究でノーベル生理学・医学賞を受賞したばかりのハーマン・マラー教授が在籍していました。遺伝は放射線被ばくによる影響を受ける、すなわち「放射線によって影響を受ける何らかの物質が遺伝情報を担っている」というマラーの主張が、若き日のワトソンにDNA二重らせん構造につながるインスピレーションをもたらしたのかもしれません。
悲劇の女性研究者・フランクリン博士のデータを盗み見たという伝説に加えて、晩年には人種差別的な発言を繰り返すなど、「正直者である」というワトソン博士の人間性には首をかしげる向きもありますが、何はともあれ、ワトソン博士とともに勃興したといえる分子生物学の時代は、彼の死と共に、一つの終焉に向かっているようにも感じられます。AIや量子技術の急激な発展によって、私たち医学者もまた新たな時代を迎えつつあるからです。
今年も気付けばあと1か月しかありませんが、研究室からできるだけ多くの研究成果を発表すべく、今、最大限の努力を重ねています。まさにラストスパートです。
幸いにも、今年は放射線影響に関する面白い現象を幾つか見出すことができました。偶然なのか、必然なのかは判りませんが、立て続けに興味深いデータに遭遇することができて、一研究者として嬉しく思っています。
現在の我々のグループの規模は小さく、研究環境も決して恵まれているわけではないため、解析できる範囲には限りがあります。つまり、Natureのような超有名誌が好むビッグデータ論文にはできませんが、定評のある専門誌上に載るような着実な論文としてならば、きっと発表できるでしょう。だから、我々の論文を採択してもらうべく、今、一生懸命に頑張っているところです。
これから数か月の間にこれらの成果を価値ある論文として立て続けに発表したいと考えており、おそらくそれぞれが出版される際には大学からプレスリリースを行うことになるはずです。願わくば、その中の幾つかは、年内にぜひ出版されてほしいものです。ワトソンとクリックによるDNA二重らせん構造発見のような、まさに時代を変える発見であるとまでは言いませんが、個人的には「悪くない出来だ」と思っていますから。
(文責:福永)

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