10月9日から13日にかけてダブリンにある University College Dublin で開催された The 7th European Radiation Protection Week (ERPW 2023) に参加しました。
アイルランドへの渡航は久しぶりだったので、はっきり言って、ダブリンの地を踏むだけで満足でした。ただ、会場では著名な先生方の姿もチラホラと見かけたものの、残念ながら、ほとんど知り合いはいませんでした。寂しくなかったと言えば、ウソになります。
しかし、欧州には放射線防護に関わる学術・職能団体が多く、それぞれの活動の内容を把握するのはなかなか大変なのですが、この学会ではけっこうマイナーな団体まで近況を報告してくれるので、この分野における欧州の動向を知るのには重宝しています。今回も、そういう意味で、とても勉強になりました。
それにしても、University College Dublin のキャンパスは綺麗でしたね。
タクシーの運転手さんから「デカいんだよ、この大学は」となぜか誇らしげに言われるくらい広大なキャンパスには美しい彫刻が散在しており、空き時間の散策が楽しかったです。同じダブリンにあるアイルランドを代表する大学 Trinity College Dublin とはすこし趣が異なるものの、University College Dublin も素晴らしい大学だと思いました。同大学は THE World University Rankings 2024 でも世界第201-250位にランクしており、はっきり言って、北海道大学よりも格上に当たります。キャンパスの景観整備なども含めて、色々と参考にできそうな点は数多いように感じました。
遊び心というか、美的センスというか、そういう「ある種の心のゆとり」や「自然に対する畏敬の念」が自然科学系の学問には大切です。したがって、学術機関にもそういう趣向を凝らした空間作りが求められるのですが、そういう意味で国内大学全般の建物、庭園のデザインの質の低さを改めて突き付けられたような心地がしました。
自然科学の研究を推進するには、研究費という金銭的な支援はもちろん大切なのですが、その他にも研究活動を支える精神的土壌の涵養が不可欠です。英国やアイルランドからは、歴史上、優れた自然科学者が数多く輩出されてきました。そのような文化的背景の一つとして、学術機関における「雰囲気づくり」というのでしょうか、例えば遊び心に富んだ空間設定や重厚な装飾も重要なのではないかと改めて感じさせられています。実際、英国やアイルランドの学術機関の建物や庭園のデザインの美しさは素晴らしいです。
日本においても、古来から借景などのユニークな空間作りは寺社などの庭園で活用されてきました。実際、優れた日本式庭園が国内の各地にあります。それは日本独自の精神的土壌の涵養にとても重要な役割を果たしてきたように思うのです。しかし、せっかく日本にも英国やアイルランドに劣らないような素晴らしい空間作りの文化があるにもかかわらず、残念ながら国内の大学等では十分に活かされていないのではないか…。
そんなことをふと思いました。
(文責:福永)
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